パンドラの箱を開けるのにカギはいらない

開けてはならない箱。人はそれを「パンドラの箱」と呼びますが、そのパンドラの箱を開ける時、鍵なんてものは必要ありません。そもそも開けてはならない物を開けようとするわけですから、鍵を使って丁寧に開けるなんていう正式な手順を踏む必要がないんです。つまり、パンドラの箱を開けるなら強引に思いっきり壊すように、鍵なんて無視して開けてしまえばいいのです。これは物理的ではない、いわゆる何かしらの事象が起きて「パンドラの箱を〜」と揶揄する際も同じですね。むしろそういった時は、鍵を使うという手順を省いて開けてしまったからこそ良くない事象が起きるのでしょうし。

ということで、兄がずっと「これは開けるなよ」と僕に言い聞かせてきたちょっとした金庫のような物を、今から鍵を壊して強引に開けようと思います。何が入っているのかなんて想像もつきませんが、僕がまだ小学生の頃から兄が口を酸っぱくして「開けるな」と言ってきたものなので、余程重要なものが入っているのでしょう。今更鍵を複製する気にもなりませんし、そもそも鍵がどこにあるのかもわかりませんから、両親の許可を得た上で強引に破壊します。

ちなみに、兄はもう家に住んでいません。というより、先月事故で亡くなってしまいました。だからこの金庫的な物を破壊して開けても、僕を怒る兄はもういないわけです。兄の遺品の中で、このいわゆるパンドラの箱だけが、まだなんなのかわからないままなのです。もしかしたら兄の大切な宝物が入っているのかもしれません。中身が何であったとしても、兄の形見として大切に保管しておくつもりですが、そのためにはこれを開けなければならないのです。エッチな物だったりしたら笑っちゃうな…なんてことを考えながら、そして、これを開けることで兄が怒りに来てくれるかもなんて考えながら、思い出に浸るようにゆっくり壊して開けたいと思います。