夫の帰りが遅いので鍵を閉めてやりました

私の父は公務員だった。市役所で働いているので、毎日定時になるとすぐに帰宅する。乗る電車も車両も決まっているし、寄り道もしてこないので、帰ってくる時間は5時37分か38分かのどちらかだ。毎日家族で食卓を囲むのは当たり前だったし、子煩悩な父だったので、たくさん遊んでもらえたことを覚えている。父というのは、そういうものだと思っていたのだ。

だから夫と結婚してしばらくすると、私はたくさんカルチャーショックを受けることになった。父のように毎日同じ時間に帰るのは無理だとしても、週に2、3回は定時で帰ってきて家族との時間を過ごしてくれるだろうと思っていた。だけど夫は忙しく、定時で帰れることは、まずない。まあそれは父の方が特殊だとわかっていたし、私も夫と結婚する前は残業だらけの生活だったので、それは理解しているつもりだ。だけどただでさえ定時で帰れないというのに、残業で遅くなったその足で夫は会社の同僚たちと飲みに行ってしまうのだ。会社の付き合いも仕事のうちだ、というのもある程度まではわかっているつもりだ。だけど毎日午前様となれば話は別である。そのことで夫と何度も喧嘩になった。まだ1歳の息子は夫に人見知りして泣くので、育児の当てにならないし、できるだけ息子と一緒の時間を増やしてほしいと頼んでも、カラ返事ばかりだ。私は毎日イライラしていた。だから夫の帰りが遅いから鍵を閉めてやっても、きっとバチは当たらないはずだ。夫は何度も何度もチャイムを鳴らしていたけれど、私は絶対に鍵を開けなかった。夫が腹を立ててこじれることになったとしても構わない。私はそれくらい、限界にまで来ていたのだ。しばらくすると夫は諦めてどこかに行ってしまった。これで心を入れ替えてくれるか、関係が悪化するのか、どちらに転ぶかはわからない。明日の夫の反応が楽しみなような怖いような気もする。